記憶 ―砂漠の花―
『お前っ、元の狼の姿に戻って走れよ!僕よりずぅっと速いだろっ!?』
「そうも簡単には戻れないんだよ…」
『アイリ!戻してくれ~!』
「ん~…基本的に魔術をかけた本人でないと…」
『あぁ~…』
そんな横では、気遣ってややペースを落としたラオウが、憐れんだ目でレンを見つめる。
アズは、未だにどう見ても自分と同年代に見えるキースに首を傾げていた。
「キース、お前本当はいくつだ?年。」
「教えない。」
キースはべッと舌を出す。
「また秘密かよ…」
「人間にしてくれたのはマギーね…?マギーとも知り合いだったんだ?」
「……そう。」
「…?」
答えるまでの少しの間に首を傾げながら、背中にいるキースを見る。
少し長めのウェーブがかかった金色の髪。
アズとは少し違う、
落ち着いた緑色の瞳。
キースは笑いながら、
「今までの秘密にも、今の質問にも、今度詳しくお答えしますよ。王子さまにお姫さま。」
私の頭をポンポンと叩いて言った。
「今言えよ。」
「何、旅は長いんだぞ、アズ。」
キースは私たちが幼い頃からラルファにいる。
面倒を見てくれて、遊んでくれて、と付き合いは長い。