記憶 ―砂漠の花―
「もう15年もたったのか…」
アズが溜め息まじりにオアシスを見回した。
外の砂だらけの土地にはない植物たちが、生き生きとその葉を揺らしている。
「久々に来たけど、変わらないなぁ、ここだけは…」
「そういえば、アズは久々だね。昔はよく二人で遊びに来たのに。次期国王様は剣術やら勉強やら、お忙しいご様子で…。」
アズはひとつ大きく息を吐くと、今度は大きな声で言い放つ。
「俺は決めたっ!」
アズの声が周囲の岩にあたって響いた。
「今夜はここに泊まる!」
その瞳は、子供にかえったようにキラキラと輝いている。
「え~…帰ろうよぉ…」
「いいじゃん、いい大人なんだし外泊の一回や二回!」
「いや、そういう問題でなく…」
すでに聞き耳持たずといった様子のアズは、ラオウに報告をする為に外へ出ていってしまった。
ラオウが…
暴れない事を祈ります。
―――案の定…、
岩壁の向こうから、
『はぁ~!?ふざけんなよ、帰ろーぜー!?』
という鳴き声が聞こえて来たが、勿論アズに伝わるはずもなく…
『アイリぃ――!!』
そう助け船を求められたが…
仕方ないので、申し訳ないが無視した。