記憶 ―砂漠の花―
「…何をしているんだ?」
キースが小声で聞くと、アランが声を潜めて答える。
「舟を固定してるんだろ。脱走者が出ないように。ここを脱走したって逃げ場なんてないだろうに…」
「…さすが、用心深いな…」
声を潜めた二人の会話は、この場にいる私でもやっと聞き取れる程の声の大きさだった。
しかし…、
制服のウィッチ男はピタリと動きを止め、こちらを凝視した。
「……!?」
私たちは、ごくりと息を飲む。
まさか…、
聞こえるはずがないのに…。
ざわざわと、
私の血が騒ぎ出していた。
――ヒュンッ…!
「………!!」
男は私たちの隠れる岩に標的を絞ると、手をかざし白い光の玉を飛ばし攻撃してきたのだ。
――ズドォンッ…!!
「…うそぉっ、何で!?」
私は、とっさに自分たちの周りにバリアを張って呟いていた。
目の前の岩は、砕けながら白い煙を放っている。
「ちっ、今バレるのはマズイ。瞬間移動してくれ、アイリ。」
キースはいつになく真剣な瞳でそう言うと、私の腕を掴み、記憶を送ってくる。
「いいか、全員にバリアは張ったままだ!」
「分かった。」