記憶 ―砂漠の花―
――ドクンッ。
私は、自らの血の動きに集中しながら、アズとアランの手を取った。
キースの手から…、
流れ込んでくる映像。
崩れた灰色の街並み…?
ざわ…
ざわざわ…
この感覚にも、もう慣れた。
怖がっている場合じゃない。
――ヒュン…
次の瞬間…、
私たちは廃墟の中にいた。
「…ここは?」
私が普段の調子で声を出すと、アズに口を押さえられる。
「…北側の廃墟だろ。まだアイツあそこにいる…」
アズは私の体ごと崩れた民家の壁に屈み込み、顎で私に方向を示した。
先程よりは男からの距離はあるが、まだ安心出来ない距離にいた。
先程の岩が崩れ落ち、煙がおさまるまで、男は手を構えたまま凝視し続けていた。
息を飲む私たち。
そこに何者もいない事を確認すると、自分の周りをぐるりと一望し、微かに唇を動かす。
そして、船に乗り込み去っていった。
「……危ねぇ~っ!ビビった!」
アランの一声が合図となり、それぞれが口を開く。
「思った以上に出来るやつだったな…。あの距離で気付くとは…。油断した。」
「アイツ帰りがけに何か言ってたよな?誰か聞こえた?」