記憶 ―砂漠の花―
「あぁあ~、アズが大声で派手に暴れるからぁ…!」
「何ぃ!?アランっお前が悪いんだろうが!」
私たちの背中には、崩れかけた廃墟の厚い壁。
見事に追いつめられた、逃げ場のない形だ。
「ちょっと、こんな時に喧嘩しないでよ!」
そう私が二人の口喧嘩を止めに入る。
リーダーらしき男はキースの首元の剣に力を入れ、
「…大人しくしろっ!」
そう脅すが、ちっとも恐れをなさない私たちに苛立ち始めていた。
顔をも覆う反乱軍のローブから唯一覗いているのは、
「緑色の瞳」。
少なからず、ウィッチではない普通の人間だ。
先程のピンチに比べれば大した事なく思えてしまう。
「…全く、緊張感の欠片もないな、お前たちは。」
対面する形になっているキースに、溜め息をつかれながら言われるが、そういう本人にも緊張感はない。
私は両手を上げながらの状態で提案する。
「ねぇ、キース。反乱軍の皆さん相手なら、女王側にはバレないわけだし…」
「――やるかっ!?」
アランが私の話の途中で、一瞬のうちに金属音をあげて武器を持つ。
それに反応した半円形に並ぶ反乱軍たちも、私たちに剣を突きつけた。