記憶 ―砂漠の花―
剣は二本、その身に持ってはいるが、人数を考えれば丸腰に近い状態で彼はこの場にいる。
余裕に満ちた、落ち着いた表情だ。
先程、キースに捕まっていた時の表情も同様で、焦った様子はあまりなかった。
その違和感は、これか…。
私をはじめ、この場にいる誰もが、キースは肯定するのだろうと思っていた。
キースは、静かに口を付けたカップから手を放すと、
「申し訳ないが、こう見えて元は狼でね…。この国に知り合いは少ないんだ。」
と、嘘をついた。
……え?
知らない人なのかな?
そう私とアズは、顔を見合わせた。
「…ほぅ、狼…。それでは、友人とは別だろうな。大変失礼した…」
リオンさんは、見て取れる程に肩を落とし、座った足元に視線をおとす。
その様子を、キースが辛そうに唇を噛み締めて見ていたのを、私とアズは見逃さなかった。
「その友人の事を、貴方の事を、少し聞いてもよろしいですか?」
アズが、リオンさんにそっと聞いた。
「あぁ、構わないよ。我ら反乱軍に協力してもらいたい、なんていう君たちだ。何でも話そう。」
「会ったばかりの俺たちに?信用出来ない人間かもしれないんだよ?」
と、アランが首を傾げた。