記憶 ―砂漠の花―
キースとリオンさんの話…
そんな場合ではなくなってしまった。
旅の目的である母上の話が、彼の口から出る。
私たちにとって思いもよらない事だった。
さらに…、
リオンさん本人が意図的に仕組んだ情報となれば、この後警戒するのは私たちの方だ。
理由を聞き、納得をしたい悲しげなキースと、警戒し自分の腰にある剣に手を掛けるアズ。
アランは、ほらね?と言いたそうに一瞬私に視線を送る。
私は彼をじっくりと観察するが、リオンさんから悪意、敵意は感じ取れない。
やはり、
敵ではない。
…じゃあ、どうして?
「本当に申し訳ない。まず、話を聞いてくれないか?」
リオンさんはアズに素直に頭を下げるが、アズの手は剣から離れない。
無理もない。
私はアズの背中へ回り、そっと肩を抱いて、その手に触れる。
「大丈夫だから…」
アズは私の声に誘われる様に、彼に向けた瞳を私に移した。
瞳が和らぐ。
「あぁ…。話を聞こう…」
私の手を握り、まるで『ここに、隣にいてくれ』と座り直す自分の横に私を導いた。