記憶 ―砂漠の花―
「私も…彼を信頼し切っていた為に、気付くのが遅くなった。国民の誰もが今も尚、信じないだろうが…。リフィルを裏で操っているのは、彼だろう。」
そうその男を思い浮かべてか、遠くの壁を見た。
「そう考えれば全てつじつまが合う。でなければ納得出来ないのだ。」
「それで、彼の名は?」
キースがリオンさんに聞く。
瞳からは動揺の色が伺える。
「マルク!」
「――そんな、まさかっ!!」
キースは、昔の記憶から該当する人物が浮き彫りになったのだろう。
自分を偽っていたにも関わらず、驚愕の声を発した。
「あ……」
「…やはり…信じられないだろう?キース。」
大きく反応を見せたキースに、優しくリオンさんが言う。
「その名に反応するお前は、やはり我が友キースなのだろう…?」
キースを見つめるリオンさんの瞳が、ゆらゆらと光る。
キースは少しの沈黙の後、
「……あぁ。」
と、うつ向いた。
「やはり!……本当に申し訳なかった!何も力になれず…!」
リオンさんはキースの両手を握りしめると、何度も何度もその手に向けて頭を下げる。
「昔の事だ…。もう頭を上げてくれ。」