Raindrop
外の景色を灰色に煙らせる土砂降りの雨音を聞きながら、白い大理石の床に靴音を響かせて歩く。

丸テーブルと椅子がいくつか並ぶロビーには、同じように雨宿りに来た人たちがちらほらと見受けられた。

「上が礼拝堂になってるんだね。行ってみる? 花音」

先程とは逆に、拓斗が花音の手を引いて歩き出した。

その花音は拓斗に手を引かれながらも僕を振り返り、頬をぷくぅと膨らませている。

頬袋にひまわりの種でも詰めているのだろうか、という顔は、たぶん、さっき水琴さんと手を繋いだから。

分かりやすすぎるヤキモチの妬き方だ。

そんな花音を見て苦笑している拓斗は、恐らくだけれど、なんとなく状況を把握している。

僕をちらりと振り返り、花音は預かるから、と目で訴えられた。



階段を上がっていく2人を見上げ、軽く息を吐き出す。

「……なにか、飲みますか?」

水琴さんに声をかけてみると、彼女はどこかぼうっとした目で僕を見た。

「ああ、いえ、今はいいわ。ありがとう」

そう言って、視線を泳がせた。

何か言いたそうな気配はある。僕も『余計なことをした』と謝るべきか、少し迷っていた。

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