Raindrop
なんとなく足が拓斗たちを追う。

窓の外から響く、唸るような雨音のように重い空気に包まれながらも、特に会話もなく階段を上りきる。

二階の廊下は教会に良くあるアーチ型の天井になっていて、そこを少し歩いていくとすぐに開け放たれた扉に辿り着いた。

ドアを潜れば、高い天井の礼拝堂だ。

扉の正面は細長い美しいステンドグラスがいくつも並んでいて、先程のように晴れているときには、さぞ幻想的な色に包まれるのだろうなと想像出来た。

右を向けば穢れなき聖母マリア像が聖壇の上で静かに佇み、そして左側には外へ続く扉が開け放たれていた。

恐らくあそこから外の階段に繋がっているのだ。

先程の新郎たちが、幸せな笑顔と鐘に包まれて降りてきた階段が。


「……下に戻りましょうか?」

ここに来て、失敗だったと思った。

雨宿りをする場所は、新郎新婦が永遠の愛を誓い合った場所ではなく、手前の店のどこかにするべきだったのだと、今頃気づいて。

水琴さんを振り返ったら、彼女はクスリと笑みを漏らした。

「いいえ、大丈夫よ。せっかくですもの、見学していきましょう」

そう言って、水琴さんは聖壇の方へ目をやった。

そのすぐ前にある最前列のベンチに、先に来ていた拓斗と花音が座っていた。聖壇にいる司教の話を熱心に聞いている様子だ。

それを邪魔しないように、外へ続くドアの方へ歩いていく。

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