Raindrop
外は相変わらず強い雨が降っていて、見下ろす欧風の街並みは寂しい色に染まっていた。

急な雨だったせいか、歩く人影も見えない。

「もう少し降り続きそうね」

外の景色を見下ろしてそう呟いた水琴さんは、「座りましょう」と僕を促した。


司教の教えに僅かに頷く拓斗と花音の頭を遠くに見ながら、一番後ろのベンチに腰掛ける。

淡い間接照明に照らされた白いバージンロードに、ベンチの端に飾られた白い薔薇は、先程の結婚式の余韻を感じさせる、甘い花の香りに包まれていた。

そうしてしばらく、ざあざあと降りしきる雨音を聞く。

「……ごめんなさい」

ふいに、隣から囁くように小さな声が漏れた。

「色々と……ごめんなさいね」

“色々と”。

それは便利な言葉だ。僕があんな風に助けてしまったから、ちゃんと状況を把握されてしまっている、と思っての言葉だろう。

「別に問題ありません」と、そこで終わらせてしまっても良いのだけれど。

……終わらせていいものかも、迷う。

「……僕も、余計な真似をしてしまって、すみませんでした」

とりあえず、言うべきことは言おう。

そう思って、頭をぺこりと下げる。

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