Raindrop
「ま、あんなヤツラに世紀の兄弟対決に水差されんのも面白くねぇからな。雑魚は気にせず、正々堂々と弟くんと戦いたまえ」

「君も出るだろう?」

「俺は二次で終わるよ。自分で分かる。俺は親父に無理やりやらされてるようなモンだし、ヘッタクソだからな」

「君の音は悪くないよ。ただ、コンクール向きじゃないというだけで」

そう言うと、響也はまたニイ~っと笑った。

「やっぱ俺、お前のこと好きだわ」

屈託のない笑顔は、先程クラスメイトたちに凄みをきかせていたのと同一人物とは思えないほにど人懐こい。

笑みを返しながら、僕はこういう風に笑う人に弱いなと、思う。

裏表のない、素直に『喜』を表現する笑顔。

たぶん僕は、自分にないものに、憧れている。

「それは光栄だね。愛でも囁いてみようか」

「はっは、やめてくれ。その綺麗な顔で言われたら危ない道に走りそうだ」

「ふふ、そうかい。それも面白そうだけれど」

「お前が言うと洒落にならんからやめろ」

そんな軽口をたたいているうちに、昇降口へと辿り着いた。

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