Raindrop
「そうかー? 俺、そうだと思うぜ? だってお前、悩みなんて人に相談しねぇタイプだろ? 澄ました顔で、全部ひとりで片付けちまうもんな。それがこんなにしょんぼりとした顔で、俺なんかに相談してんだぞ? これはマジだろ。だから俺もマジメに答えてんだろ」

「僕を理解してくれているのは有難いけれど、そんな勘違いな気遣いは無用だよ」

「んな抵抗いいからさっさと告っちまえよ。そして男子中学生の期待の星となれ」

「また訳のわからないことを……」

苦笑とともに溜息を漏らし、残りのオレンジジュースを飲み干してマスターに礼を言い、席を立った。

「逃げんのかよ」

鋭い瞳を更に鋭くした響也に睨まれる。

「もう時間なんだ。西坂を待たせてしまうからね」

にこりと微笑んでそう返すと、更に目付きを鋭くされた。

「勘違いしないで欲しいけど……僕は水琴さんを人として尊敬している。それだけだよ」

「ホントかよ」

「君に嘘をついても、僕が得することなんてないんだけれどね」

訝しげに僕を見る響也は、しばらくしてふん、と鼻を鳴らした。

「分かった分かった。今日はそういうことにしといてやるよ。でも俺は確信している。次にお前から先生の話が出るときは、人としての興味が恋に変わってるってな」

「なに預言者みたいなことを言ってるんだい」

おかしなことを言う響也を軽く笑い飛ばして、もう一度マスターに挨拶をしてから店を出た。

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