Raindrop
僕の声に気づいた水琴さんを支えていた方の女性──アキさんというのだろうか──が僕を見た。

「んっ? 誰、アンタ。水琴の知り合い?」

フラフラしている水琴さんを支えているからか、アキさんの顔は眉間に皺が寄り、歯を食いしばった鬼のような形相になっていた。

ベリーショートの髪型も手伝って、勇ましい印象の女性だ。

「……はい、そうです」

少し引き気味になりなが答えると、アキさんの目がキラリと光った。

「ちょっと来て! この子タクシーに乗せるから手伝って!」

「……分かりました」

なんとなく逆らえないような空気を感じ、携帯をズボンのポケットに入れて水琴さんたちに近づく。

すると、頭を揺らしている水琴さんが僕に気づいた。

「……あぁ~れぇ~? 和音くんだぁ~」

へにゃっとした笑みを浮かべ、水琴さんはアキさんの手を振り払い、よろけながら僕のところまで歩いてこようとした……のだが。

真っ直ぐに歩けていない彼女は、ちょっとした段差にヒールを取られ、足首を捻ってガクリと体を横に倒した。

「危なっ……」

はっとして駆け出したけれど間に合わない。

水琴さんはそのまま勢い良く道路に転がった。

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