Raindrop
音楽教室でのレッスンを終えて帰宅する頃には、外はすっかり真っ暗になっていた。

弟妹たちはもう食事を済ませただろうか。

昨日はふたつ下の妹、花音が鍋を黒焦げにして泣いていた。

今日も泣いていないといいのだが……今日は拓斗が先に帰っているだろうから、大丈夫……か、な……?


拭い去ることの出来ない不安を抱えつつ門を潜り、雨に濡れる広いイングリッシュガーデンを眺めながらしばらく歩く。

その先にある洋館には、あたたかな明かりが灯っていた。



玄関ドアを後ろ手閉めて一息つき、『覚悟』を決める。

今日こそは『耐え抜いてみせる』、と。

「ただい……」

ま、と言葉を繋げる前に。

「おかえりなさあぁあぁあああーい!!」

弟と妹が元気のいい声を響かせながら廊下を駆けてきて、そのままの勢いで激しくタックルしてきた。


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