Raindrop
そうしてエレベーターに向かったところで、一人目の人物と出会う。
下から上がってきたエレベーターから降りてきたのは、ベリーショートの髪が良く似合う、気の強そうな顔立ちの女性──アキさんだった。
「……あれ、昨日の? もしかして今まで水琴の面倒見ててくれたの?」
エレベーター前にいた僕を見て、アキさんは目を丸くする。
「はい。……ああ、昨日は大丈夫でしたか?」
「ああ、彼氏に迎えに来てもらってなんとかね。……てか、ええと……もしかして、『橘和音』?」
「え? ……はい」
どうして知っているのだろう、と疑問に思う間もなく、アキさんは「うわっ」と手を額に当てた。
「ごめん、中学生に押し付けちゃった! 昨日は暗かったから良く分かんなくてさぁ。……ごめんね?」
「いえ、大丈夫ですけれど……どうして僕を?」
「音楽やってる奴なら大抵は知ってるでしょ。天才ヴァイオリニスト『橘律花』の息子、『橘和音』。あたしこの間のコンクール観に行ってたんだよ。水琴の教え子になったって言うからさ」
「そうだったんですか」
「意外だな、結構小さいんだね。ホールではもっと大きく見えてた」
「……そう、ですか」
「それだけアンタの演奏が大きいってことだよ」
軽く笑われながら腕を叩かれる。外見通り、男勝りで豪快な人だという印象を受けた。
下から上がってきたエレベーターから降りてきたのは、ベリーショートの髪が良く似合う、気の強そうな顔立ちの女性──アキさんだった。
「……あれ、昨日の? もしかして今まで水琴の面倒見ててくれたの?」
エレベーター前にいた僕を見て、アキさんは目を丸くする。
「はい。……ああ、昨日は大丈夫でしたか?」
「ああ、彼氏に迎えに来てもらってなんとかね。……てか、ええと……もしかして、『橘和音』?」
「え? ……はい」
どうして知っているのだろう、と疑問に思う間もなく、アキさんは「うわっ」と手を額に当てた。
「ごめん、中学生に押し付けちゃった! 昨日は暗かったから良く分かんなくてさぁ。……ごめんね?」
「いえ、大丈夫ですけれど……どうして僕を?」
「音楽やってる奴なら大抵は知ってるでしょ。天才ヴァイオリニスト『橘律花』の息子、『橘和音』。あたしこの間のコンクール観に行ってたんだよ。水琴の教え子になったって言うからさ」
「そうだったんですか」
「意外だな、結構小さいんだね。ホールではもっと大きく見えてた」
「……そう、ですか」
「それだけアンタの演奏が大きいってことだよ」
軽く笑われながら腕を叩かれる。外見通り、男勝りで豪快な人だという印象を受けた。