Raindrop
どすん、と思い切りドアに背中を打ちつけ、一瞬息が詰まる。

これが来ることを予想して覚悟を決めたのだけれど、二人分を受け止めるには、僕はまだまだ力が足りないらしい。

両脇から抱きついてきた弟妹たちは僕の苦悶の表情には気づかず、きらきらと宝石のような目で見上げてきた。

「お帰り兄さん! 雨、大丈夫だった?」

「お兄ちゃん、お兄ちゃん、おなかすいたぁ~、はやくごはん食べよ~!」

「ご飯食べたら、僕のヴァイオリン聴いてくれる約束だからねっ」

「ええー……お兄ちゃんは私と一緒に遊んでくれるんだよねぇっ……?」

「僕は昨日から約束してたんだよ」

「私もおとといからしてたもんっ」

「してなかったよぉ」

「したもん~! ずっとずっと前からお兄ちゃんと遊ぶって言ってたもん~!」

僕に抱きつきながら、鼻を突き合わせて言い合う拓斗と花音。

「……2人ともいいから。まずは先にご飯を食べようか。待っててくれたのかい?」

そう問いかけると、2人は睨みあうのをやめて、僕を見上げた。

「うんっ!」

良く似たまん丸の愛らしい目がよっつ、きらきらと輝く。


──ああ、尻尾振った子犬が二匹、いる……。


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