Raindrop
「……アキさんは水琴さんのところへ?」

アキさんの提げているコンビニの白い袋に目を落としながら訊ねる。

「ああ、うん。何度電話しても出ないからさ、倒れてやしないかと思って。もしくは昨日の男に襲われたか」

ニイ、と笑うアキさんに眉尻を下げて見せれば、彼女は豪快に笑った。

「ま、その心配はなさそうね。水琴はまだ寝てるの?」

「ええ、夕べからずっと」

そう返事をしながら、僕はこのまま帰るべきかな、と思った。

友人であるアキさんが来てくれたのなら任せたほうがいい。

しかしアキさんは、手にしていた袋を僕によこした。

「じゃ、これ飲ませてやって。缶コーヒーだけど。あと梅干とか、色々入ってる」

「僕から渡してもいいんですか?」

「その方が良さそう。『てめぇもう二度と酒飲むんじゃねえ!』って言っといて」

「でも」

「アンタのこと、結構気に入ってるみたいだからさ。言われ慣れてるあたしからより、お気に入りのお坊ちゃまに言われた方が効くでしょ」

お気に入り? と目をぱちくりさせると、アキさんは斜め上を見ながら少し考え込んで。

「あー……まあ、詳しくは言えないんだけどさ。最近、水琴落ち込んでてね。でもアンタたち兄妹の話するときだけは楽しそうだったから。そんな大事な子たちから『お願い、もう酒飲んで暴れないで!』って言われたら、言うこと聞くしかないでしょ。だから、お願い」

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