Raindrop
水琴さんはずっと、何かを抱え込んでいるようだったけれど。

僕たちのことを話すときだけは楽しそうだった？

それならば……僕たちの前で見せていたあの笑顔は、無理をしていただけではなかったということだろうか。

それを知り、少しだけ心が軽くなった。


「……そういうことでしたら」

そう言い、アキさんからコンビニの袋を受け取る。

「じゃ、よろしくね」

アキさんはそのまま、乗ってきたエレベーターに乗り込む。

「あ、そうそう、下に停まってるあの黒塗りのでっかい車、アンタの？」

黒塗りのでっかい車、とは……思い当たる車は確かに家の所有車にあるけれど。

「そっか、アンタのか。そうだよね、橘のお坊ちゃんが送り迎えもなしにあんなところうろついてるわけないもんね」

納得、と呟いてアキさんは手を振った。

その直後にエレベーターのドアが閉まる。


……もしその車が本当にうちの車ならば。

運転しているのは西坂のはず。


アキさんを運んだエレベーターを戻し、一階に降りて小走りにマンションを出る。

しっとりとした霧の向こうに現れたのは、黒いロールス・ロイス・ファントム。やはり僕の専用車だった。

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