Raindrop
近づいていくと運転席が開いて、強面の巨躯が僕の目の前に聳え立った。

「お帰りなさいませ、和音様」

「西坂……どうしてここが分かったんだい?」

「これが『fermata』近くの店舗前に落ちておりまして」

と、ソリッドシルバーの携帯電話を差し出された。僕のものだ。

どうやら水琴さんをタクシーに乗せようとしているときに落としたらしい。

「もしや何かの事件に巻き込まれたのかと心配になりまして、付近の捜索、聞き込みを行いましたところ、昨晩和音様と水琴様を乗せたというタクシーの運転手に辿り着きまして。それでこちらでお待ちしておりました」

「そうだったのか。すまない、心配をかけてしまって」

「ご無事で何よりでございました。それで……私の独断で色々と細工をしておきましたが、宜しかったでしょうか」

「細工?」

「はい、無断外泊となると、旦那様や奥様にご報告申し上げなければならなくなりますので……ご友人である響也様にご協力をいただきまして、昨晩は鳴海家に泊まったということにしてあります」

「響也に頼んだ? どうして」

「……こちらにお泊りだということで」

フランケンシュタイン似の西坂の頬が、ぽっと桃色に染まった。

……ちょっと不気味だけれど、そんな感想は横に置いといて。

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