Raindrop
「西坂まで勘違いするのはやめてくれないか……」

「勘違いでございますか? それでしたら出過ぎた真似をいたしました。私はてっきり、和音様もお年頃なのだと……」

「勘違いだよ」

ぴしゃりと言い放つと。

「申し訳ございません」

巨躯が腰から直角に折れ曲がり、勢い良く頭を下げられた。

そこから少しばかり顔を上げ、西坂は言う。

「ですが和音様、ひとつ約束をしてください。無断外泊はいけません。皆様が心配なさいます。このようなことが続けば私も隠し通せなくなりますし、水琴様の立場も危うくいたします。ですからどうか、連絡だけはしてください」

「ああ、分かっている。……今回は僕の不手際だ。すまない」

「いえ、分かっていただければ宜しいのです。この西坂も和音様の元気なお姿を見られて安心いたしました」

「……うん、本当にすまなかったね。それと、ありがとう。響也には色々詮索されるかもしれないけれど、拓斗たちに知れなかったのは助かったよ」

彼らの僕に対する『“綺麗”なお兄ちゃん』のイメージを壊したくはない。

……というより、僕が壊して欲しくない。

何故だろう、とは思うけれど、常に弟や妹に尊敬されていたい兄としてのプライド、だろうか。

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