Raindrop
「和音様のお役に立てたのでしたら宜しゅうございました」

そう言ってまた頭を下げる従順な執事に、もう一度礼を言ってから、ふと思い立った。

「西坂、この時間でも買い物の出来るところはあるのかな」

「お買い物ですか。何をご所望で」

「食材を」

「そうですね……ああ、確かこの近くに朝市がありましたな。覗いてみましょう」



そうして西坂とともに朝市を回り、食材を調達してマンションに戻った。

響也の家に泊まったことになっているのならば、早朝に帰るのは不自然。午前中いっぱい料理の時間に割いても大丈夫なはずだ。



そんな経緯で、僕は今、水琴さんの部屋のキッチンに立っている。

二日酔いで具合が悪くて食べられないかもしれないので、冷凍庫に保存しておけるようなものを色々と作る。

こんなに何もない冷蔵庫では、水琴さんの体調が心配だ。

西坂からレンジで解凍してすぐに食べられるようにすれば良いだろうというアドバイスを受けたので、小分けにしてたくさん詰め込む。

鍋やフライパンなどの調理器具、色んな調味料も揃っているので、本来は料理をする人なのだと思う。

この生活の乱れはあの幸せそうな2人……無神経なポストカードを送りつけてきた人たちのせいなのかと思うと腹が立つのだけれど。

今は水琴さんに食べてもらうことだけを考えて、買ってきた食材を調理していく。

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