Raindrop
「覚えてませんか? 夕べ、居酒屋の前で会って、そのままここに来たんですけれど」

「居酒屋……あれ、アキちゃん……」

「別々に帰りましたよ」

「え……それで、私……和音くんと、ここに?」

「そうです」

「……」

ぼうっとしていた彼女の目が、徐々にはっきりと見開かれた。

そうして僕を見つめていた水琴さんは、ばっと布団の中身を確認した。それから辺りに視線を走らせて……ゴミ箱を覗きながら何やら呻いている。

……何を確認しているのかは分かるのだけれど、そう分かりやすくされると、さすがにちょっと恥ずかしい。

「水琴さん」

「な、なにっ」

泣きそうな声で振り返る顔は、なんだか絶望的にも見える。

……ああ、その顔は少し傷つくな。

「大丈夫ですよ、何もしてませんから」

「あ、え、そ、そうっ!? ホント? いや、違、そうじゃなくて、そうじゃないわ、そこは『何もされてません』でしょう!?」

「……そういうものですか」

「そうよっ、だって貴方中学生っ……ああ、私何をしてるの……どうしてこうなったの、ごめんなさい……うう……」

頭が痛むのか、水琴さんはまたベッドに蹲った。

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