Raindrop
晩秋の時期に行われた僕のソロコンサートでは、自分でも納得の演奏が出来た。

“あの日”からしばらく、水琴さんは僕と顔を合わせると気まずそうにしていたけれど、練習は今まで以上に捗った。

酷く傷つきながらも僕たちへの指導は手を抜くことをしなかった。

その誠意に応えたいと思ったのが、コンサート成功の鍵だったのかもしれない。


そのコンサートの後には関係者およそ20人を家の大広間に招いて、打ち上げパーティが開かれた。

普段は静かな家の中には賑やかな声が響き渡る。

その中にはもちろん、水琴さんの姿もあった。

飲みすぎて転んで痛めた足はただ捻っただけだったらしく、あの後一週間ほどで回復した。

今も花音と談笑しながら歩き回っているけれど、もうすっかり良いみたいだ。

微笑を浮かべながらそれを見守っていると、声をかけられた。


「ここ数ヶ月で急激に伸びたんじゃない?」

人々の輪から外れ、壁際に立っていた僕に声をかけてきたのは、一通りの挨拶回りを終えた母だった。

艶やかな長い黒髪を揺らす母は、まだ二十代で通る若々しさを持つ。……本当はギリギリアラサーだけど。

若く見えるのは幼い顔立ちのせいもあるかもしれない。たぶん、花音が大人になったら母のようになるだろう。丸くてくりくりとした目などそっくりだ。

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