Raindrop
「そうだね。調子はいいかな。水琴さんのおかげだよ」

「ああ、そっちもだけど。身長よ」

言いながら、母は僕と同じように壁を背にして立つ。

「なんだ、そっち?」

「成長期にしばらく見ないと別人みたいになるわね。自分の息子なのに」

言われてみれば、いつの間にか母の身長を追い越していた。見下ろす位置に母の頭がある。

気づかなかっただけで大分前に追い越していたはずだけれど。母はこんなに小さかったのか、と改めて思う。その逆で、母は僕のことを大きくなったな、と思っているようだ。

「夏以来だからね」

「そうよ。なんでこんなに仕事が立て込んでいるのかしら」

「それだけ母さんの演奏を聴きたがっている人が多いってことだよ」

「その分、貴方たちに会えないんだもの」

「僕たちは大丈夫だよ。母さんは好きにやりなよ」

そう言うと、母は口を尖らせた。

「……少しはお母さんがいなくて寂しいとか、言ってみない? 逆にお母さんが寂しくなるわ」

「それは寂しいよ? そろそろ母さんの作るシチューが恋しくなる季節だからね」

お望みどおりに寂しげに微笑みながらそう言ってあげたのに、母はしかめっ面。

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