Raindrop
「申し訳ありません和音様。わたくしが手をお貸しいたしました。わたくしが勝手にやったことですので、どうかお2人を叱らないでやってくださいませ」

パンチパーマをキツめにかけ、割烹着を着た壮年の女性のメイド長、かなえさんは深々と頭を下げた。

ちなみに、うちのメイドたちはみんな、藍のワンピースに白いエプロンドレスの、ごく一般的なメイド姿だ。

しかしかなえさんだけは割烹着スタイルを頑としてやめない。

似合っているから特に何も問題はないけれど。

「うん、でもね……」

「分かっております。旦那様の崇高なお考えの元、あの素晴らしい家訓があるのだということは重々承知しております。ですが……あまりにも、お2人のお手元が危なっかしくて……あまりにも危なっかしくて!」

くわっ! と目を見開いて迫ってくるかなえさんに、僕は一歩後退った。

「……分かったよ、かなえさん。今日は貴女の好意に甘えることにします」

そう言うと、かなえさんだけでなく、拓斗や花音もほっとしたような顔になった。

「ありがとうございます和音様! ああ、和音様、相変わらずお優しい……」

割烹着のポケットから白いハンカチを取り出し、よよよ、と泣き出すかなえさん。

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