Raindrop
火傷した手を冷水に浸し、水琴さんは微笑みながら僕を見た。

「和音くんって、こういうことに慣れているみたいに見えるけど……やっぱり彼女にご飯作ってあげたりするの?」

「……彼女はいませんが、ご飯は毎日作りますよ。火傷の対処は、拓斗や花音がよくやりますので、まぁ、慣れていますね」

「あら、ご飯はメイドさんが作ってくれたりしないの?」

「うちでは自分で作るのが家訓になっているんです」

「そうなの? あんなお城みたいな家の人が自炊なんて……」

「父の教えで。自分のことは大抵自分でやりますよ」

「和音くんがしっかりしているのはそういうところからなのね……私、何も出来なくて恥ずかしいわ……」

「水琴さんも上達してきたじゃないですか」

「本当? そう思う?」

「ええ。今朝は何を作ったんですか?」

「目玉焼きとウインナーを焼いたわよ!」

キラキラとした目でそう言う水琴さんに、思わず吹き出す。

確かに、卵も割ったことがなかった彼女にしてみれば、それは“調理”だ。

「それはいいですね。それにサラダか果物を添えてもらえると良いかもしれません。出来ればスープか牛乳などの飲み物も」

「なるほど、一汁三菜っていうものね。バランスは大事よね」

水琴さんは真剣な顔で頷く。

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