Raindrop
「え、コンヴァトを受験するの?」
出来上がった料理をカウンターに並べ、スチール椅子に並んで座りながら、先日母に提案されたコンセルヴァトワール──パリ国立高等音楽院の受験の話を水琴さんに相談した。
「そっか……和音くんなら留学するのがベストよね。願書提出はいつになるのかしら」
「10月ですね。来年になりますが」
「試験は?」
「2月だと思います。課題曲は直前にならないと発表されないので……それまでに多くの曲を練習する必要があって。それで水琴さんに相談を……」
「フランス語は?」
「レベルB1の証明書が必要になります。問題はないと思いますが、試験を受けないとなりません。まあ、実質、A1くらいの能力がないと難しいかと思いますが」
「そうよね、試験の指示も全部フランス語ですもの。それさえ出来れば聴音もリズム読みも大丈夫ね」
「ええ、大丈夫です」
「じゃあ私が教えられることはひとつね。後で律花さんに相談して、選曲しておくから。早いほうがいいわね……たくさん覚えてもらわなくちゃ」
なんだか生き生きした表情で、先程作ったホイル焼きの鶏肉を箸でつまむ水琴さん。
「宜しくお願いします」
軽く頭を下げ、僕も水琴さんの作ったホイル焼きを頂く。