Raindrop
「あははは、和音くんったらどうしてそんなに気障なのかしら。駄目よ、その顔でその言葉は反則だわ。ちょっとトキめいちゃうじゃない」

と、額を人差し指でつん、と押された。

「『好き』だなんて言葉は、ちゃんと好きな人にだけ言わなきゃ。みんな勘違いしてしまうわよ?」

コロコロと笑いながらそう言う水琴さんに、僕は軽く溜息。


──僕は貴女のことが好きなので、何の問題もないのですが。


まったく相手にされていない。

まったく異性として意識されていない。

それが分かるからこそ、今は何も言えない。

まったく意識されていない相手に告白出来るほど、僕は強くないのだ。



「でも和音くんがそう言ってくれるおかげで、今はとても前向きになれているの。本当にありがとう」

今はそう言って微笑んでもらうだけで、それなりに満足だ。



あと2年。

僕がパリへ旅立つ頃には。

もう少し、意識してもらえるのだろうか……。



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