Raindrop
そんな彼女に見守られながら夕食をとり、3人で後片付けをしてからリビングへ。

クラシカルなヨーロピアンインテリアで統一されたリビングで、拓斗と花音が睨みあいながら──とは言っても、2人ともあまりにも愛らしいので、ちっとも睨みあっているようには見えないのだが──じゃんけんを始めた。

僕にヴァイオリンを聴かせるか、それとも遊んでもらうかの勝負。

ソファに腰掛けながら見守る僕の目の前で、2人は構えた。

「せーのっ、じゃーんけーん……ぽんっ!」

拓斗がチョキで、花音がパー。

「拓斗の勝ちだね」

「やったぁ~!」

両手を振り上げる拓斗に、パーの手を出したまま固まる花音。

彼女の顔が歪んでくる前に、僕は手を差し出す。

「おいで、花音」

そう言えば、泣きそうな顔をしながら飛びついてきた。

膝に乗って首に両腕を回してくる妹は、まるで幼い子どもだ。

それを見た拓斗は、喜んでしまったことを反省するように眉尻を下げて、花音に言う。

「明日は花音の番だよ。花音が遊ぶ番だからね?」

「んぅ~……」

首に両手を絡ませて抱きついているので、僕から顔は見えないけれど。

きっと、頬がぱんぱんに膨れている。

僕と拓斗は顔を見合わせて苦笑し合った。

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