Raindrop
その光がふっと和らいで、ようやく僕も息をついた。

目が合った水琴さんは、いつものふわりと柔らかい笑みを浮かべた。

「どう?」

「……さすがです」

そんな感想しか出てこない。

本当に感動してしまったときには、人は言葉少なになるものかもしれない。

言葉の代わりに、水琴さんに飲み物を差し出す。ずっと演奏していて喉が渇いただろうと。

水琴さんは礼を言いながらそれを受け取り、ちょっと休憩、と僕の隣に座った。

「ところで、さっきから気になっていたのだけれど、これはなぁに?」

……と。

僕の反対側を覗き込む水琴さん。

そこには白い箱が置いてあった。水琴さんへのプレゼントのつもりで持ってきたものだったけれど……出しそびれてしまった。というか、このまま持って帰りたい。

「なんでもありませんよ」

「ふうん」

僕の言うことなどおかまいなしに、水琴さんは僕の前に身を乗り出し、箱を手にした。

「ケーキじゃないの?」

「いや、その」

白い箱は見るからにケーキの箱だ。袋に入れてくるべきだったと思いながら、しかし箱を開ける水琴さんを止めることも出来ずにいると。

「すごい、何これ!」

水琴さんが感嘆の声を上げた。

< 224 / 353 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop