Raindrop
「素直に伸びる、いい音だわ」

ぱんぱん、と水琴さんは拍手をしてくれた。

「まだまだ……未完成ですね」

「ふふ、未完成でもいいのよ。荒削りでも心を込めて紡がれた音は魅力的だもの……あら、この間和音くんに言われたことみたい。成る程、こういうことなのね……」

「はは、そうですね」

微笑みながら、ヴァイオリンを下ろす。

「でも、弾くからには完成させたいですね。納得いく演奏が出来るようになったら、また聴いていただけますか」

「ええ、もちろん」


そんな約束をかわし、また演奏会を続ける。

水琴さんの作ってくれた料理をいただきながら、水琴さんの演奏を聴いたり、僕が演奏したり。

そのうち水琴さんがヴィオラを出してきて、2人でデュエットをしたり、この間のように歌いながら演奏したりをしているうちに、結構時間が経っていたようだ。

いつの間にか冬の低い太陽はもうすぐ隠れようとしていて、窓の外は薄暗くなっていた。

「和音くんといると時間が経つのが早いわね」

なんて嬉しいことを言われながら、また飲み物を用意してくれる水琴さん。

ずっと演奏しっぱなしでだいぶ喉が乾いていた。

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