Raindrop
ふわり、と何か甘い香りに包まれた。

そんな気がして目を開けると、もう視界は歪んでいなかった。

頭を動かすと、柔らかな感触がした。枕か、クッションが頭の下にある。

身体も布団に覆われていた。キルトのカバーは水琴さんのベッドにあったものだ。ということは、まだ水琴さんの家か。

身を起こすと、ソファの短い足が見えた。

倒れた僕をベッドまでは運べずに、なんとかソファ下のラグまで引っ張ってきた……という感じだろうか。

「……すみません、水琴さん」

食器のぶつかり合う音が聞こえるキッチンに向かって声をかけると、水琴さんがひょこっと顔を出した。

「和音くん! 大丈夫? 具合は?」

水琴さんは慌てたようにキッチンから飛び出してきて、僕の前に膝を折る。

「ああ……大丈夫なようです。すみません、ご迷惑をおかけしました。どれくらい倒れていましたか?」

「ええと、一時間くらいかしら……本当にごめんなさいね、私の不注意で」

「いえ、一口飲んで気づかない僕もどうかしていたんです。大丈夫ですから、気にしないでください」

「ううん、和音くんは悪くないのよ。さっき西坂さんにも連絡しておいたから、おうちでもゆっくりしてね。具合が悪くなったらすぐに言ってね」

「ありがとうございます。多分もう大丈夫ですよ」

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