Raindrop
窓硝子についた手は、両方とも冷え切っていた。

それを背にしている水琴さんの身体も冷えてしまっているかもしれない。

けれども。

水琴さんの白い頬は赤く染まったままだった。

恐らく、僕の顔も赤い。

「貴女にとっては大したことではなくても、僕にとってはそうじゃないんです。……時間を戻せるのなら、あの日に帰ってやり直したいくらいですよ」

「そ、そんな」

水琴さんは小さく首を横に振った。

「違う……違うわ、そんなの、勘違いよ」

「勘違い?」

「私を好きだなんて……何か、間違えているのよ。そう、最近は一緒にいることが多かったから……」

「……何故貴女が勘違いだと決めるんですか」

「だって、それ以外考えられないものっ。そうでなかったら、お酒のせいで失敗してしまったことを気にかけているだけなのよ。貴方は真面目な人だから、責任とか、そういうのを感じているだけっ……」


そんな風に、抱き合うような至近距離で言い合っているところへ。

コンコン、と。

ドアをノックする音が聞こえた。


「お兄ちゃーん、音しないけど、もう終わったの~?」


……花音だ。

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