Raindrop
「で、噂好きのババアの話によるとだな」

響也は顔を顰めながら言った。

「斎賀商事、相当ヤバいらしいぞ。傾いてるっていうか、もう押しつぶされそうな感じ? そんで……斎賀の社長、一条の息子に自分の娘を売ったんだとよ。一条隆明がクラッシック好きらしくてさ。水琴センセーのことも気に入ってんだと。くれるなら援助してもいい。会社経営も任せてくれるなら立て直してみせるとか……そういう、話」


親切にも水琴さんの婚約者の情報まで仕入れてきた響也によると。

相手は一条グループ三男、隆明。

現在ニューヨーク在住の28歳。

ハーバード大学でMBAを取得後、一条の関連会社で経営コンサルタントとして活躍している。

財力的にも、人材的にも、潰れかけの斎賀にとってはもってこいの救世主。


では、あの教会で出会った男性は?

酔いつぶれるまで酒を飲み、生活を乱れさせ、夢の中でさえ涙を流すほど焦がれていたあの男性は誰なのだ。


その疑問も、響也が解明してくれた。

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