Raindrop
「今日は本当にありがとうございました」

すっかり闇に包まれた雨降る庭を背に、見送る僕たちや執事たち、その他の家人たちに向かって深々と頭を下げる水琴さん。

「凄く楽しい時間だったわ。とてもいい気分でニューヨークへ行けそう」

にっこりと微笑む水琴さんの後ろには、エンジンのかかったリムジン。

空港から一条隆明の手配で呼ばれたものだ。

ここから真っ直ぐに空港へ行き、ニューヨークで待つ一条隆明の元へ行く。


「水琴先生がいなくても、ちゃんと練習しておきますねっ」

「ええ、頑張ってね、拓斗くん」

「せんせー、ウェディングドレスの写真、送ってねー」

「分かったわ、花音ちゃん」

別れを惜しみながら、笑顔で会話する弟妹たち。

それを見ながら腕時計を気にするのは、車を降りて待つリムジンの運転手だ。

水琴さんは時間ギリギリまで僕たちと一緒にいてくれた。

もうこれ以上、引き止めておくことは出来ない。

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