Raindrop
「……それで? 水琴さんは?」

早口で捲くし立てると、母の嗚咽が微かに聞こえてきた。

──やめてくれ

そんな、絶望的な声は……。

「水琴さんはどうしたの、母さん!」

彼女の無事を祈り、思わず荒げた声の向こうから、小さく、残酷な答えが返った。

『……亡くなったわ』



ずしり、と。

胸の奥に、何か重いものが落とされた。



嘘だ。



嘘だ。



『頑張った、らしいのよ? でも、山を越えられなくて、今朝方……』

弱々しくもなんとか言葉を紡ぐ母の涙声を、耳から遠ざけた。



──嘘だ。



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