Raindrop
無事に手術が終わっても、母と花音はすっかり暗くなって落ち込んでいた。

そんな2人に「大丈夫だよ、元気だして」と励ましていたのは拓斗だった。

だいぶ疲れていた2人を先に家に返して、西坂と一緒に病室に残った拓斗は、僕の傍らに立って静かに僕を見つめた。

「兄さん、痛みとか、大丈夫……?」

「ああ、痛み止めが効いてるから平気だよ」

「それなら、良かった……」

そう言って微かに笑みを作った後、拳をぎゅっと握り締める拓斗。

「……心配かけてすまなかったね。大丈夫だよ。神経は再生するそうだから。時間はかかるけど、動かせるようになるから」

「うん」

コクリ、と頷いた拓斗は、真剣な眼差しで僕を見た。

「兄さん、ごめんね」

「……何を謝るんだい?」

「僕、本当に何も出来なくて。こんなときまで気を使わせて、ごめんね」

「そんなことはないよ……」

「ううん」

拓斗はゆるゆると首を振り、そして強い瞳でこう言った。

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