Raindrop
「兄さんが治療している間、家のことは僕に任せて。花音の面倒もちゃんと見るし、母さんのことも守るから。父さんと兄さんがいない間は、僕がしっかりするから。だから兄さんは、自分のことだけ考えて」

「拓斗……」

「僕、もう兄さんには頼らないようにする。兄さんに肩を貸せる男になれるように、頑張るから。だから、これからは、ちゃんと……言って。辛いときは」

涙を堪えるようにぐっと唇を噛んで、拓斗は力強い決意を僕に語ってくれた。


「……分かった。頼りにしてるよ、拓斗」

「うん、うん!」

ぽろりと涙を零してしまい、慌てたように手の甲で目をごしごしとやる小さな弟に微笑みかけ、そして包帯をぐるぐるに巻かれた左手を見る。

「拓斗、どうやら僕はまだヴァイオリンを弾きたいみたいだ。これからは頼りっぱなしになってしまうと思うけど……いいかい?」

「いいよ。兄さんが頑張るなら、僕も頑張るから」

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