Raindrop
「和音様は今まで忙しくしすぎていらっしゃったのですよ。天から休暇を与えられたのだと思って、心身ともにお休みください」

「……そうだね。ゆったりとした時間も、時には必要なのかもしれないね」

そうは言っても、焦らないでいることは難しい。

一ヶ月経つ頃には硝子によって出来た傷は塞がってしまったけれど、指先にはピリピリとした感覚しかなく、動かすこともままならない。日常生活をこなす事すら難しい状態だった。

三ヶ月目にはリハビリの成果か、ボールを握れるくらいにまでは回復した。

でもまだまだ……。

まだ、ヴァイオリンを弾けるようになるにはほど遠い。


学校では、僕が怪我をしてヴァイオリンを弾けなくなったという噂が広がっていて、好奇の視線を向けられることも多かった。

僕に敵意を抱いていたグループは「いい気味だ」と言って笑い、その度に響也が咆えて、それを僕が止めて……とやっていると、今までとさほど変わらないな、と笑えてきたりする。

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