Raindrop
様々な人の助けに支えられ、なんとか辛い時期を乗り越え、それから3ヶ月ほどでようやく指の一本一本をバラバラに動かせるようになった。

少しだけ希望が見え始めて。

そこで僕は中学卒業を迎えた。



厳かな式の後、親たちや友人たちとも離れ、僕と響也はまだ冷たい風の吹く学校の屋上に寝転がって、早春の薄い青空を見上げていた。

卒業。

今日でこの学び舎と、そして友ともお別れ。

そう思うと、なかなか離れ難いものだ。

僕たちは随分と長いこと、並んで寝転がっていた。

風が寒いとか、日差しは温かいとか、何でもない会話をポツリポツリとしながら、ゆっくりと流れていく白い雲を眺めていると。

「和音」

改まった声で、響也に呼ばれた。

「なんだい?」

「俺、高等部卒業したら、ボストン行くわ」

「……バークリー?」

「ああ。ホントは卒業したらすぐに渡米するつもりだったけど、さすがに中卒じゃ駄目だって親父に説得されちまったからな。高校でみっちり音楽と英語やって、ちゃんとした学校行く」

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