Raindrop
天神学園は、どこにでもある普通の学園。

……そう、聞いていた。

僕がここを選んだ理由は、校風が自由だということと、他校では得られない感性を身につけられると、父に勧められたからだった。

何を隠そう、天神学園は父の母校だ。

父は天神学園在学中に、指揮者の道を選択したらしい。

あのカオスに満ちた音の世界をひとつに繋げたいと思ったとか何とか。良く解らない理由を言っていた。


まともに楽器を弾くことの出来ない僕が、響也のように音楽科へ進むのは躊躇われたし、それならばまったく見も知らぬ環境に飛び込んで、新しく出会う人々から色んなものを学んでいけたらと。そう決心した。

母は若干不安そうな顔をしていたし、進路指導の先生には物凄い勢いで「あそこだけはやめるんだ! 君のような深窓のご令息が通えるような学校じゃない!」 ……と取り乱していたけれど。

密かに尊敬もしている世界のマエストロが勧めるのだから、良い環境には違いないだろうと。

期待感を膨らませて、その門を潜って。

「……」

僕は静かに驚き、父の言葉の意味を少しだけ理解した。

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