Raindrop
柔らかく地面を叩く雨音に混じり、どこからか足音が響いてくる。
それを夢心地に聞きながら音を奏で続けていると。
「何をやっているの!」
突然そう声がして、ぐいっと腕を掴まれた。
雨音の落ちる世界からはっと意識を戻された僕は、その声に振り向いて……心臓が、止まるかと思った。
「え……」
声が、出ない。
静かな雨音も、そよぐ風の音も、咲き誇る紫陽花の色もどこかに吹き飛ばし、その存在は僕の目の前に現れた。
線の細い女性だ。
肩下まで伸びた色素の薄い髪が緩やかに波打ち、美しい瞳で僕を睨み上げている。
「そんな大事なものを濡らさないで。もう弾けなくなってしまうわよ」
彼女は着ていた白いカーディガンをさっと脱いで、僕からレディを奪うと丁寧にそれで包み込んだ。
「西坂さんが近くにいらっしゃるのでしょう? 車を出してもらって。早く楽器店に行って見てもらわないと」
片腕でレディを抱きかかえ、反対の手で僕の手を強く引いて歩き出そうとする、この目の前の女性は。
「……水琴、さん」
それを夢心地に聞きながら音を奏で続けていると。
「何をやっているの!」
突然そう声がして、ぐいっと腕を掴まれた。
雨音の落ちる世界からはっと意識を戻された僕は、その声に振り向いて……心臓が、止まるかと思った。
「え……」
声が、出ない。
静かな雨音も、そよぐ風の音も、咲き誇る紫陽花の色もどこかに吹き飛ばし、その存在は僕の目の前に現れた。
線の細い女性だ。
肩下まで伸びた色素の薄い髪が緩やかに波打ち、美しい瞳で僕を睨み上げている。
「そんな大事なものを濡らさないで。もう弾けなくなってしまうわよ」
彼女は着ていた白いカーディガンをさっと脱いで、僕からレディを奪うと丁寧にそれで包み込んだ。
「西坂さんが近くにいらっしゃるのでしょう? 車を出してもらって。早く楽器店に行って見てもらわないと」
片腕でレディを抱きかかえ、反対の手で僕の手を強く引いて歩き出そうとする、この目の前の女性は。
「……水琴、さん」