Raindrop
そうして楽器店へ向かう間、水琴さんに起きたこの3年の出来事を話してもらった。


事故には遭った。それは事実だった。

けれど亡くなってはいなかった。

それは水琴さんの周囲の人たちによる、偽装工作だったのだ。


僕たちの家で水琴さんの結婚祝いパーティが行われる数日前から、水琴さんのお母さんが一条隆明には他に愛人がいるのではないかと疑っていて、水琴さんにも内緒で本人に問い詰めていたのだそうだ。

あらゆる手段で一条隆明の不貞の証拠を集めていた矢先、水琴さんが事故に遭った。

瀕死の娘を見て、怒りが爆発したのか。

斎賀夫人は、集めた証拠をマスコミにリークすると言い出した。

娘がこんなことになったのは、だらしない男たちのせいだと。

そんな男は地獄へ堕ちてしまえと罵りながら、生死をさ迷う水琴さんの前で大揉め。


「……母は、昔父の不貞で苦しんだらしいの。おまけに自分も政略結婚で辛い思いをしたから」

「ああ、そのあたりの怒りも相まってしまったんですね……」

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