Raindrop
「こんなとんでもないこと、どうして思いついたんでしょうね。皆よほど冷静じゃなかったのね」

ふふ、と水琴さんは笑みを零す。

さらりと亜麻色の髪が白い肩に落ちるのを見て、彼女がワンピースのみだということに今頃気づいた。

着ていたカーディガンは僕のレディを包み込んでいる。

こんな薄着のまま、雨に濡れた女性をそのまま放置しておくなんて……紳士としてあるまじき行為だ。

「すみません」

謝りながらジャケットを脱ぎ、水琴さんの肩にかけてやる。

「ありがとう」

ふわり、と柔らかな彼女の微笑みは、3年前と何も変わらない。

そんな彼女の前髪の下に、チラリと傷跡が見えた。

無意識のうちに手を伸ばし、髪をかき上げて傷を露にする。……額から側頭部にかけて横断する、かなり大きな傷跡だ。

これはきっと事故で出来た傷。

以前は額を出す髪形だったけれど、前髪を作ることで隠したのか……。

「……これのおかげで、しばらく記憶が曖昧だったわ」

抵抗はしないけれど、傷を見られることが恥ずかしいのか、少し目を逸らす水琴さん。

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