Raindrop
けれど、同じ中等部にいる僕や拓斗のことは狙わなかった。

確実に仕返しのできる、一番弱い者を狙ってきた。反吐が出るほどの卑怯者。

「今年も出るようだから……さらに順位を下げてあげられるよね? ……拓斗」

微笑みながらそう言ったら、拓斗は勢い良く首を縦に振った。

「頑張る!」



同じ音楽を嗜む人間として、やってはいけない過ちを犯した者たちに、僕たちは負けるわけにはいかなかった。

これから予選、本選に向けて更に練習を重ねていけば、決して不可能なことではない。


けれど、ひとつ心配があった。

僕たちは『橘』なのだ。

どんなに良い成績を取っても、親の七光りだと言われてしまう。それではまた、恨みを買うことになってしまうのだ。

なら、どうしたら良いのか──。

自分には音楽の才能がないと、納得せざるを得ない状況に持っていくには……。



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