Raindrop
そんなことを考えてしまう自分に、ゆるりと頭を振る。

──何を考えているのだろう。

こんなことに友人を巻き込むなんて、出来るはずがない。しかも響也は響也で、コンクールに出る理由があるのだ。

余計なことを言って、コンディションを乱してもらいたくもない。

「……なんだ、どうかしたのか?」

「なんでもないよ」

ヴァイオリンケースを持って立ち上がる。開店時間まではまだあるけれど、そろそろ帰らないと花音が心配だった。

「今日は終わりかー?」

「うん、もう家に帰らないと」

花音の寂しそうな顔をチラつかせながらそう答えると。

「は?」

──と。

響也が首を傾げた。

「今日はレッスンのはずじゃなかったっけ」

訝しそうに僕を見る響也。

「あ……いや」

ぼんやりしてしまっていたのか……こんな失敗をやらかすなんて。

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