Raindrop
「教室は辞めたんだ。今度からは家で個人レッスンをすることになって」

響也から視線を逸らしながらそう答えると、彼の僕を見る目が鋭くなった。

「ほお~? コンクール間近のこの時期に先生変えるってどういうことだよ」

「それは……色々と」

「色々と?」

「そう、色々と。……もっとうまく時間を調整するのに家の方がいいかと思って。それに、あの先生の下ではこれ以上上達出来る見込みがなさそうだしね」

上手く言い訳出来たと思ったのだけれど。

響也は更に目付きを鋭くし、ソファから立ち上がった。

そして、僕の胸倉を掴んで凄みをきかせる。

「ちゃんと本当のことを話せよ、オラ。下手な嘘ついてっと殴るぞ」

「はは、それは痛そうだね」

軽く笑ったら、更にきつく締め上げられた。

「俺は真面目に聞いてんだよ」

「……そうだろうね」

お手上げだ、と片手を挙げて見せたら、ぱっと手を離してくれた。

それからソファに座るように促され、渋々それに従い、渋々事情を説明する。

響也の反応は、思った通りだった。

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