Raindrop
「俺の小鹿ビームに何してくれてんだあの女ああっ!!」

ソファから飛び上がる勢いで怒鳴る響也。

「……いや、君のじゃないけど」

そんな僕の呟きは聞こえないらしい響也、立ち上がる。

「今すぐぶん殴ってやる!」

「……言うと思った」

店の外へ飛び出して行こうとする彼のシャツを掴み、止める。僕の周りは血気盛んな人が多くて困る。

「暴力は駄目だよ」

「んじゃあ、どうすんだよ!」

「コンクールで真正面から勝負する。僕と拓斗で」

「……ああ」

響也は納得したのか、ソファに座りなおした。

「それはご立派だな。でも……ああクソッ、イライラすんな! そういう卑怯なのだいっ嫌いだ!」

バアーン、と手のひらでテーブルを叩き、むすっと頬杖をする。

「浅葱……クソ、イライラする名前だなあっ!」

「君がそこまで苛つくことは……」

「浅葱姉妹んとこは、親父の会社のライバル会社の専務なんだよ! しかも向こうのが業績いいからことあるごとに嫌味言われてんだよ!」

「……そうだったのかい」

意外な繋がりに驚く。ああ、それで『あの女』呼ばわりを……。

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