Raindrop
「よっしゃ、分かった!」

ぱぁーんと太腿を叩く響也。

「あの馬鹿姉妹に一泡吹かせてやればいいんだろ? 俺もやるわ!」

「……なにを?」

「コンクール本選三位以内!」

「……」

きょとんと目を丸くした僕を見て、響也は自信満々の顔を少し歪めた。

「……無理だと思うか?」

「……いや」

僕は響也を見つめたまま言う。

「君は、いけると思うよ。ピアニッシモをフォルテッシモにしたり、変なところにスタッカート入れたり、楽譜にはない音符を付け足したりしなければ」

「う、うう……すまん、だってその方がカッコイイと思って弾いてた頃のクセが抜けなくて……」

「乗ってくると更に酷くなる」

「そ、その通りだ。……やっぱ、無理か?」

「気を抜かなければ、いけるよ」

僕たちは見つめあったまま、しばらく無言の時を過ごす。

やがて、響也がぐっと拳を握った。

「よっしゃ! やるぞ! 小鹿ビームの敵討って、馬鹿姉妹蹴落として、お前ら兄弟満足、俺も満足、そして親父も説得! 一石五鳥だぁ~!」



そんなにうまくいくのかどうか、分からないけれど。

心強い味方が出来たことは確かだった。



< 68 / 353 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop